グローバルマクロ投資にうってつけの日

株、債券、金利、通貨、コモディティに関する投資メモ

マクロ分析の道しるべ④ GDPの使い方2

前回はトランプ氏の経済政策をGDPの定義式にあてはめて分析した。

今回は消費税増税GDPに与える影響について分析する。

新聞を読んでいると、「消費税増税は日本の財政健全化につながり、経済と株価にとってプラスの影響がある」という論説を見かけたとしよう。前回の増税時には実際に何度か見かけた。これが正しいかどうか判断してみよう。

まずはGDPの定義式。

GDP

= 個人消費 + 企業投資 + 政府支出 + 純輸出

=(GDP - 税金 - 貯蓄)+ 企業投資 +(税金 + 財政赤字)+ (輸出 - 輸入)

 

前回と同じく、これを転じて以下のように考える。

将来のGDP

=(既に受け取った今のGDP - 税金 - 貯蓄)+ 企業投資 +(税金 + 財政赤字)+ (輸出 - 輸入)

 

財政健全化を目的とした消費税の増税は、式の各要素にどんな影響を与えるだろうか?恐らく次のようになるはずである。

将来のGDP

=(既に受け取った今のGDP - 税金↑↑ - 貯蓄↓)+ 企業投資 +(税金↑↑ + 財政赤字↓↓)+ (輸出 - 輸入)

 

コンポーネント別に説明する。

まず個人消費はどうなるか?増税するので税金は上がり、税金が上がると受取ったGDPのうち使える金額(どうでもいいけど可処分所得という)が減ってしまう。使えるお金が減った結果、貯蓄できる金額が部分的に減る。あくまで部分的に。年間500万円増税されて500万円消費を減らすのならば、貯蓄に回るお金は増税がなかった場合と比べて減らない。でも、そんな人はまずいないからである。

したがって、個人消費増税額未満の金額が減少する。

 個人消費↓ = 今のGDP - 税金↑↑ - 貯蓄↓

 

次に政府支出はどうなるか?増税によって税収は増える。そして、その増税は財政の健全化を目的としているため、増税額と同額の財政赤字が減少する。つまり、政府支出は変わらない。

 政府支出→ = 税金↑↑ + 財政赤字↓↓

 

企業投資と輸出入に影響はないとすると(ちょっとはあるけど)、GDPは次のように変化すると予測できる。

 将来のGDP↓ = 個人消費↓ + 企業投資 + 政府支出→ + 純輸出

 

将来のGDPが減少するから、増税は経済と株価に悪影響を与える。マクロ経済学と常識と経験を組み合わせて書くならば、増税が経済にプラスに影響するのは、ギリシャのように財政問題が表面化してしまった一定の状況だけである。

新聞には、嘘みたいな頻度で誤ったことが書かれている。

 

さて、GDPを道具として使いこなすことができれば、マクロ分析のかなりの部分をマスターしたことになる。こんな単純なものが何の役に立つのかと思うかもしれないが、名だたるマクロ系投資家たちがやっていることは、信じられないかもしれないがこの分析と全然変わらない。というのも、彼らが使っている道具がこれなのだ。

定義式をさらに発展させるので、つづく。