マクロ分析の道しるべ③ GDPの使い方
GDPの定義式は以下のようになっていることを紹介した。
= 個人消費 + 企業投資 + 政府支出 + 純輸出
=(GDP - 税金 - 貯蓄)+ 企業投資 +(税金 + 財政赤字)+ (輸出 - 輸入)
諸事情によりさらに定義式を書き換える(ほんとうは状態を表す定義式に時間経過のような概念はないけど)。
将来のGDP
=(既に受け取った今のGDP - 税金 - 貯蓄)+ 企業投資 +(税金 + 財政赤字)+ (輸出 - 輸入)
今回は実際にこれを道具として使ってみる。米国大統領選をテストケースとしてあてはめてみよう。
トランプ大統領候補の政策は、単純化して以下の通りとする。
① 減税をする
② 公共投資をする(壁を作る)
③ 輸入を減らす(関税をかける)
もしトランプ大統領が当選したならば、トランプ大統領の政策はGDPの構成要素に以下のような影響を与えると予測できる。
将来のGDP
=(今のGDP - 税金↓↓ - 貯蓄↑)+ 企業投資 +(税金↓↓ + 財政赤字↑↑↑)+ (輸出 - 輸入↓)
矢印が政策によって受ける影響である。順番に説明する。
① 減税をすると、個人消費のマイナス要因である税金が減少する。税金が減って生じる金銭的な余裕(可処分所得というが、それはどうでもいい)の一部は消費に回り、一部は貯蓄に回ることになる。つまり、減税された分の何割か(この割合のことを消費性向というが、これも別にどうでもいい)は個人消費を増加させる。
② 公共投資をすると、政府支出は増加する。余談だが、減税したので歳入は減るが公共投資で政府支出は増えるので、財政赤字はかなり拡大することになる。
③ 輸入が減ると、輸出マイナス輸入である純輸出は増加する
したがって、個人消費と政府支出と純輸出が増加することになり、GDPも増加すると予測されることになる。
将来のGDP↑↑↑ = 個人消費↑ + 企業投資→ + 政府支出↑ + 純輸出↑
そして、実際もこの通りのことが起こったわけである。
世間の雰囲気に惑わされず、たったのこれだけのことを自分で考えさえすれば、経済の専門家のほとんど全員を上回る分析ができていたことになる。これが投資の道具としてのGDPの使い方である(すごい!)。
次回は別のケースを試してみる。つづく。