グローバルマクロ投資にうってつけの日

株、債券、金利、通貨、コモディティに関する投資メモ

マクロ分析の道しるべ① 金利と物価と景気の話

書くことがないので、グローバルマクロ分析やマクロ経済学の初歩について、できるだけ噛み砕いて書いてみたい。自らの理解度を試す意味でも有益なことであるように思う。

 

金利と物価と景気は、基本的に以下のように循環している。

 

景気↓ ▷ 物価↓ ▷ 金利

  △       ▼  

金利↑ ◀ 物価↑ ◁ 景気↑

 

物価が下がれば金利を下げて冷えた経済を助けることができるし、物価が上がれば(≠ 景気が良くなれば、である)金利を上げて、加熱した経済を冷やす必要がでてくる。

では、景気が冷えても物価が上昇を続ける場合、金利を下げることはできないのか?物価と景気のどちらを取るのか?金融政策が理性的に運用されるのであれば、金利が下げられないどころか利上げされる。たとえ景気を絞め殺してでも。

物価が上がってしまったので(≠ 景気が良くなったので)、景気を悪くしないような範囲で慎重に金利を上げて金融を引き締めているのが(◀の前半の過程)アメリカのイエレン議長であり、景気が悪くなったので(≠ 物価が下がったので)金利を下げたが、何も起こらず頭を抱えて夜眠れないのが(▼の過程)日銀総裁である。

金利を下げたのになぜ経済が回復しないのかについて一応は学問上の結論がでている(というよりも金利を下げても景気が回復しないマクロ経済学的理屈が先に生まれて、現実がそれを模倣した)。しかし、その場合にどのようにすれば景気が回復するのかについて結論は出ていない。

 

景気が良くなってモノが売れるから物価が上がる(景気↑→物価↑)という因果関係も、タイムリーで重要な点である。

では、逆をやったらどうなるか?物価を上げたら景気も良くなるのだろうか?

やはり結論は出ていない。人工的に物価を上げたらどうなるのかを試すため、どこかの国で実験が行われた。というか、どこかの国が実験場になった。物価はろくに上がらず、そのパルプンテ的実験はスタートラインにすらたどりつかずに終わった。責任者は頭を抱えて夜眠れなかったに違いない。

 

こうして考えると、つくづく頭を抱えるのが好きな人だな。つづく。

暫定的に、いつか破裂するまでは

為替レートの決定理論は未だ見つかっていないし、恐らく永久に見つからない。

仕方がないので私は、実質金利 = 名目金利 - (期待)インフレ率 が為替レートを決定するのだと便宜的に考えている。1つ目の理由は、そう考えた方が経済全体を整合的に分析し易いからであり、2つ目の理由は、名目金利とインフレ率が為替レートの全てを決定しないにせよ、為替レートに大きな影響を与える要素であることに変わりはないからである。

過去にも触れてきたとおり、ドル円の為替レートはこの数年以上に渡って日米10年金利差と連動してきた。私の考え方に沿うならば、為替レートは名目金利によって間違って決定されてしまい、インフレ率は不当に無視されてきたということである。

過去にはインフレ率も名目金利もまとめて無視された時期もあるから、大切な何かが無視されることは珍しいことではない。貿易摩擦が注目を集めていた時期には、ドル円の為替レートは米国の貿易赤字に連動していた。

 

この時に、為替レートは実質金利によって決定されると考えて投資していたとしたならば、大損を被っていたはずである。金利や物価とは逆の方向に為替レートは継続的かつ大きく動いたからだ。

しかしながら、為替レートは貿易赤字額によって決定されると考え、そのように投資したとしても、やはり最終的には大損を被っていたはずである。為替レートは正しい方向に(少なくとも私にとって正しい方向に)値を修正したからだ。

 

誤れば失い、正しくとも失う。正しく考え、転換点をじっと待ち、捉えて、果敢に決断する必要がある。

転換点はどこにあるのか?皆はいつ正気に戻るのか?マーケットはいつインフレ率に注意を払うのか?

 

転換点は、Fedが利上げを急ぐその理由がインフレ率なのだとマーケットが気がつく瞬間であるはずだ。失業率や雇用統計やGDP成長率や、議長の任期や品のない大統領といった、それほど重要でない要素が注目される限り、それはまだ起こらない。

利上げ回数は確かに重要な事柄かもしれないが、利上げ回数が為替レートを決めているわけではない。どちらかといえば、インフレーションが利上げ回数と為替レートを決めているのだ。

インフレは、まだそれほど注目されていない。そして、名目金利と為替は連動し続け、間違った方向に動き続ける。米国の物価上昇率は、既にリーマン・ショック前の水準にまで至り、さらに上昇しているというのにである。

だから今のところ、インフレーションというマグマはどこか注目されない場所に溜まり続けている。暫定的に、いつか破裂するまでは。

東芝とオリンパスの比較

マーケットについてマクロ的な観点から書くべきことは、まだ見つからない。

 

代わりに東芝について書く。

jp.reuters.com

ニュースを目にした瞬間にチャンスだと感じて調べてみたのだが、東芝オリンパスと同じだと考えて投資をするのは危険である、というのが、調査開始3分で下した私の結論である。

続きを読む

ジャンケンと投資の必勝法に関する考察

ジャンケンに勝つ可能性は三分の一、引き分ける可能性は三分の一、負ける可能性は三分の一である。このように考える時点で、ジャンケンに勝つことはできない。多分投資でも。何故か?

 

一から考える必要がある。どうしてジャンケンに勝つ可能性は三分の一なのだろうか?それは、ジャンケンにはグー、チョキ、パーの3手があり、それぞれの手が出される可能性は三分の一だからである。あなたの出す手は三通り、私の出す手は三通り。掛け合わせて都合9通りの可能性があり、結果も均等に3通りになる。だから、勝つ可能性は三分の一、引き分ける可能性は三分の一、負ける可能性は三分の一だ。これで絶対に間違いない。だから、必勝法など存在しない。ダウト。

 

よく考えてみるべきだ。本当によく考えてみるべきなのだ。

はっきり言って、ジャンケンに勝つ可能性が三分の一だというのは絶対に嘘だ。人間に3つの手をランダムに出すことなどできないからだ。人間は機械ではない。ランダムに手を選ぶことなどできない。偏るのだ。特に、ジャンケンが確率のゲームだと誤解している場合には。

 

今度は逆に考えてみよう。ジャンケンの勝ち負けが確率によって決まると信じる人間は、どんな手を出すだろうか?簡単だ。グーかパーである。そうでしょう?
そしてそれは、あなたが過去にジャンケンで出し続けてきた手でもある。絶対に偏るのだ。

ジャンケンは確率のゲームだから、何を出しても結果は同じかもしれないし、チョキをだすのは面倒かもしれない。でも、だからこそ少し考え直したほうが良いかもしれない。そこには重大な見落としがあるかもしれないからだ。

 

ジャンケンでパーを出せば、勝率は三分の一を大幅に超える。私は実際に試したからよく分かる。

 

ジャンケンに勝つ方法にしても投資で勝つ方法にしても、何かを上手くやる方法は常に同じだ。これは自分への戒めでもある。常識にも他人にも惑わされずに、全力を尽くしてよく考えることである。