グローバルマクロ投資にうってつけの日

株、債券、金利、通貨、コモディティに関する投資メモ

暫定的に、いつか破裂するまでは

為替レートの決定理論は未だ見つかっていないし、恐らく永久に見つからない。

仕方がないので私は、実質金利 = 名目金利 - (期待)インフレ率 が為替レートを決定するのだと便宜的に考えている。1つ目の理由は、そう考えた方が経済全体を整合的に分析し易いからであり、2つ目の理由は、名目金利とインフレ率が為替レートの全てを決定しないにせよ、為替レートに大きな影響を与える要素であることに変わりはないからである。

過去にも触れてきたとおり、ドル円の為替レートはこの数年以上に渡って日米10年金利差と連動してきた。私の考え方に沿うならば、為替レートは名目金利によって間違って決定されてしまい、インフレ率は不当に無視されてきたということである。

過去にはインフレ率も名目金利もまとめて無視された時期もあるから、大切な何かが無視されることは珍しいことではない。貿易摩擦が注目を集めていた時期には、ドル円の為替レートは米国の貿易赤字に連動していた。

 

この時に、為替レートは実質金利によって決定されると考えて投資していたとしたならば、大損を被っていたはずである。金利や物価とは逆の方向に為替レートは継続的かつ大きく動いたからだ。

しかしながら、為替レートは貿易赤字額によって決定されると考え、そのように投資したとしても、やはり最終的には大損を被っていたはずである。為替レートは正しい方向に(少なくとも私にとって正しい方向に)値を修正したからだ。

 

誤れば失い、正しくとも失う。正しく考え、転換点をじっと待ち、捉えて、果敢に決断する必要がある。

転換点はどこにあるのか?皆はいつ正気に戻るのか?マーケットはいつインフレ率に注意を払うのか?

 

転換点は、Fedが利上げを急ぐその理由がインフレ率なのだとマーケットが気がつく瞬間であるはずだ。失業率や雇用統計やGDP成長率や、議長の任期や品のない大統領といった、それほど重要でない要素が注目される限り、それはまだ起こらない。

利上げ回数は確かに重要な事柄かもしれないが、利上げ回数が為替レートを決めているわけではない。どちらかといえば、インフレーションが利上げ回数と為替レートを決めているのだ。

インフレは、まだそれほど注目されていない。そして、名目金利と為替は連動し続け、間違った方向に動き続ける。米国の物価上昇率は、既にリーマン・ショック前の水準にまで至り、さらに上昇しているというのにである。

だから今のところ、インフレーションというマグマはどこか注目されない場所に溜まり続けている。暫定的に、いつか破裂するまでは。