グローバルマクロ投資にうってつけの日

株、債券、金利、通貨、コモディティに関する投資メモ

インフレ目的でマネーを増加させた日銀は、マネーの増加とインフレはリンクしないと言い放った。

日銀の金融政策決定会合には、案の定、最近滞りがちだったブログのネタになるということ以上の意味はなかった。度々言及してきたが、日銀にできることはもう何もないのだ。

日銀のアナウンスは以下のとおりである。

特に読む価値はないので、私が順番に要約と翻訳をすることにする。日本銀行の総裁は大変に成熟した大人であるので、理解しやすい言葉に噛み砕くのには苦労を要した。

・我々は、緩和政策のターゲットをマネタリーベースから金利に変更することにした。

・これからは、日銀が金融緩和とも引き締めともならない長期・中期・短期的な金利水準を試算して、それに比して適度に緩和的な金利水準を想定し、適度に緩和的な金利水準を目指して金利を操作する。

・短期的な金利水準の目標は、現状のマイナス0.1%で適切である。

・新たに中期的な金利水準(長期国債金利)の目標を設け、これがゼロ%程度となるように金利を操作する。もっとも、ゼロ%程度というのは今と同じくらいなので、国債の買いオペは年額80兆円程度とこれまでのマネタリーベース目標と同じになるはずである。

・なので、これは量的緩和の縮小ではない。現状維持である。

・つまり我々は、現状維持ではインフレ率2%の達成が不可能なので、こうなってしまった理由を検証し、インフレ率2%を達成するために今回の政策変更的現状維持を決めた。これをもってインフレ率2%の目標は達成可能となったので、撤回しない。(?)

金利を金融政策のターゲットとしたのは、半分は金融機関の収益を助けるためであるが、そればかりではない。残りの半分は、金融機関の収益の減少から生じる金融システムへの不安感が実体経済に与える悪影響を取り除くためであるのだから。

・したがって、金融機関の収益を底上げするのが理由の50%であり、金融機関の収益を底上げするのが理由の残り50%であるのだから、金融機関の収益を底上げするのが理由の100%ではない。(?)

長期金利中央銀行が操作できないとされてきたが、これは量的緩和というものが存在しなかった昔の話で、実質的な財政ファイナンスをすることが常識となった日本銀行に当てはめるのは適切とはいえない。

・これまでインフレ目標を達成するため量的緩和を行ってきたのは、「短期的にマネタリーベースの増加と期待インフレ率が密接にリンクしている」からだが、「短期的にマネタリーベースの増加と期待インフレ率が密接にリンクしているわけではない」ので、今回は金融政策の目標として金利を選択した。(??)

 

何かのジョークかとも思えるが、そうではないのだろう。

日本銀行スタッフの優秀な頭脳が、わけの分からない言葉遊びに費やされているわけであり、なんとも嘆かわしいことである。

増々変化するドル円相場の相関関係、投資してから考えること

ここ数回のエントリーでは、ドル円相場と日経平均との相関関係の変化について述べた。今回はドル円相場と金利との相関関係の変化について、整理されていなくとも思考を残したい。

 

直近90日のドル円相場と日米10年物国債金利差との相関関係は0.9を超えている。しかし、直近30日では0.9を下回っている。

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ドル円相場と金利差との関係性を見る場合には、2年もの国債金利差を見るのがセオリーとされている(らしい)が、私は基本的に10年物国債金利差に注目してきた。だから、過去180日でみた場合でも相関関係は0.9を超えている(0.95に近いのではないか?)であろう事は感覚的に分かる。

 

仮に、ドル円相場の水準が名目10年固定金利差-インフレ率の差で計算した実質金利で決定されるとした場合、過去半年は日米のインフレ率の差がなかったか(米インフレ率2%、日インフレ率ゼロ%なのでありえない)、ドル円相場の水準がインフレ率の差を無視していたかのどちらかということになる。私はドル円相場の水準がインフレ率の差を無視していたのだと考えてきた。

そして、上記の仮定と、ドル円相場のプライシングを尊重するのであれば、次のような理由が考えられる。

 

ドル円相場は、名目10年固定金利差の拡大を予想している

⇛米国の利上げ予想と整合的である(私は利上げがあれば早晩アメリカの景気は腰折れすると考えてきたので、これはひとまず却下しよう)

⇛又は、日本の長期金利上昇が短期的なものであることを暗示している(なさそうである。最近述べたとおり、イールドカーブのスティープ化はまだ続くか維持されると思う)

ドル円相場は、インフレ率の差の縮小を予想している

⇛米国のインフレ率が低下傾向にあることを暗示している(私にとっては盲点だが、長期停滞論者にとっては意を得たところだろう)

⇛又は、日本のインフレ率が上昇傾向にあることを暗示している(財政支出の増加と整合的である)

 

①はどちらもなさそうであるとするならば、残る理由は②である。そして、日本のインフレ率が上昇傾向にあるとするならば、私が過去数回でメモしてきたことと整合的な内容なので、特に考える必要はない。

考えるべきこととして残るのは、米国のインフレ率が低下傾向にあるかどうかということである。

米国のインフレ率が低下傾向にあるのであれば、大抵の場合は不景気を伴うはずである。しかしダウ平均もS&P500も史上最高値付近にある。私の不確かな思考が正しいのか、ダウ平均の値段が正しいのか。

 

1月間の休みを経てからさらに1月間が経過したが、私はまだ何にも投資できていない。休みの前には何かにつけてあれこれと閃いたのだか、今は投資行動に結びつくほどの何かが全く閃かない。こういう場合には、理由はなんでも良いからとにかく何かに投資をするのが良い。

アメリカの経済は下向きで、物価は低下傾向にあるとしよう。それであればダウ平均の値段が間違っているということになるし、私はショートすべきということになる。少額で構わないから、ダウ平均の先物のショートポジションを取ってみることにしよう。

また、私の不確かな予測通りに米国のインフレ率が低下傾向にあるかどうかをマーケットの動向から判断するには、米国の物価連動債の値動きに注目すればよいことになる。ではそうすることにしよう。

日銀総裁は「負のショックへの対応に、より大きな自由度を獲得した」と言い訳混じりに語った。

私は黒田総裁が悪人だとまでは思わないが、こういった記事を読むと本当に脱力する。白川総裁はもっとずっとまともだった。少なくとも、経済活動の大きさに比して自らの小ささを自覚する謙虚さはあったように思う。

物価2%目標の早期実現に必要なら量・質・金利の3つの次元でちゅうちょなく追加緩和措置を講じるとし、いずれにも追加緩和余地があると語った。

 みっともなく、かつ、無能な中央銀行の建前がこれで

そのうえで「いくらでも望み通りの水準に金利を引き下げられるわけではない」としたが、現行のマイナス0.1%という水準は「新たな下限制約からは、まだかなりの距離がある」と指摘。マイナス金利政策の導入で「負のショックへの対応に、より大きな自由度を獲得した」と語った。

こちらが言い訳混じりの本音である。

日銀は考えもなく金融政策の手段を使い果たしてしまって、世界的な危機に際してようやくひねり出せる程度の手立てしか残していないということだ。

「負のショックへの対応に、より大きな自由度を獲得した」。情けなくて何も言えない。なんともいえない気持ちがする。これが取り繕った言い訳でなくて何なのか。

負のショックへの対応により大きな自由度を獲得したかったのであれば、最初から何もせずにただ負のショックを待っていればよかったのではないのか。利下げと量的緩和という有効な金融政策のすべてを出口も残さず使い切った後で、その発言はあんまりではないのか。将来に対する責任を感じないのか。恥を知れと言いたい。

限界のない財政政策は節度を超えるか?

経済が無風状態なので、書くことがあまりない。肌感覚と実際とが異なることも多いが、VIXを見ると今回は実際に無風状態のようだ。

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日本経済も無風状態だが、かねてから懸念していことが議論され始めた。

jp.reuters.com

今回は金融緩和と財政支出の組み合わせが必ず物価を上昇させることになる仕組みについて説明を残したい。

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