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グローバルマクロ投資にうってつけの日

株、債券、金利、通貨、コモディティに関する投資メモ

東芝とオリンパスの比較

マーケットについてマクロ的な観点から書くべきことは、まだ見つからない。

 

代わりに東芝について書く。

jp.reuters.com

ニュースを目にした瞬間にチャンスだと感じて調べてみたのだが、東芝オリンパスと同じだと考えて投資をするのは危険である、というのが、調査開始3分で下した私の結論である。

 |東芝オリンパスの共通点

東芝オリンパスには確かに共通点がある。両社ともに粉飾(どう見ても粉飾だ)をしていたし、その手口は資産(のれん)の過大計上である。

粉飾が発覚した後、オリンパスの株価は1月足らずで五分の一以下になった。しかし、その後の半年程度で3倍(元の6割)に戻し、さらにはアベノミクスに乗って株価は完全に回復した。

stocks.finance.yahoo.co.jp

それであれば東芝も同じ運命を辿りそうなものであるが(私はそれを期待して調べたのだ)、東芝も同じであると考えるのはどうやら危険である。

 

オリンパスの場合(なぜオリンパスの株価は回復したか?)

東芝と同じような手口の粉飾を行ったオリンパスは、なぜ暴落した後に短期間で株価を回復できたのだろうか。私の考える(実際もそうだと思うのだけれど)理由は次のようなものである。

① 会社価値の低下

投資家にとってのオリンパスの会社価値は、粉飾が発覚すると資産の過大計上分だけ低下した。二万円が入った財布から一万円が抜き取られていると発覚すれば、その価値が一万円分低下するのと同じことだ。

会計仕訳でいえば、(粉飾が単純な形で修正されるのならば)以下のような形だ。

損失(利益の減少) 10,000 / のれん(資産の減少) 10,000

マーケットはパニックになり、株価は暴落した。

 

② マーケットのヒステリックな反応と見落とし

マーケットは大騒ぎを終えると冷静になり、それからオリンパスの会社価値を上向きに見直すことにした。マーケットは時々ヒステリックになるし、大切なことを見落とす。

オリンパスに関してマーケットが見落とした「大切なこと」とは何だったか?それは利益である。

オリンパスは、資産を過大計上すると同時に、その過大な部分を少しづつ費用化し、過大に表示していた資産価値をゼロに近づけている真っ最中だった(償却終了による完全犯罪は達成間近だった)。

会計仕訳でいえば以下のような形だ。

のれん償却(利益の減少)500 / のれん(資産の減少)500

そして、粉飾が露見してのれんが一度に消滅するのであれば、上記の仕訳は必要がなくなる。償却して減少させるべきのれんが消えてしまうからだ。つまり、のれんの償却(利益の減少)が行われなくなる分だけ、毎期の利益は増加する。

付け加えると、私も当時は見落とした。そこまで考えが至らなかったのだ。

 

③ 価値の再評価とオーバーシュートの巻き戻し

②を踏まえてオリンパスの会社価値は再評価され、下落しすぎた分が巻き戻された(私は指をくわえてそれを見ていた)。オリンパスはマーケットが思っていたほど金持ちではなかったにせよ、マーケットが思っていたよりも稼ぎは良かったわけである。それほど悪くはない。

結果として、粉飾による悪影響のある程度が緩和され、株価は短期で回復した。めでたしめでたし。

 

東芝の場合

さて、チャンスの匂いを嗅ぎ取った私が調査開始後3分で見つけたのは、東芝有価証券報告書に記載されていた以下の注記である。

3) のれん及びその他の無形資産
 ASC 350「無形資産-のれん及びその他」に基づき、のれん及び耐用年数が確定できない無形資産について、償却をしないかわりに少なくとも1年に一度は減損のテストを行っています。

この注記は、のれんが費用化されていないことを示すものだ(「かわりに」以下は職業専門家たる公認会計士お墨付きのジョーク)。つまり、資産の過大計上は行っていたが、オリンパスとは違って東芝の利益は過少になっていないということである。

粉飾が露見してもその影響を緩和するものは何もない。オリンパス東芝とでは、明らかに状況が違っている。

 

|おわりに

過大計上されていた資産の大部分はのれんという名称で科目表示されるが、「のれん」がどういったものであるのかは大した問題ではない。パーチェス法だとか持ち分プーリング法だとか、自己創設のれんの客観性だとか国際会計基準だとか、ブランド価値だとか超過収益力だとか、そういったことは気にする程のことではない。常識と最低限の思考力さえあれば、特別な知識は必要がない。オリンパスの「のれん」は償却する必要があったのに、東芝の「のれん」はなぜ償却されなかったのか、と思い至るくらいの常識と思考力があれば十分である。

肝になるのは、何らかの資産が過大計上されており、それが発覚したことである。そして、資産が過大計上されていた分だけ利益を圧迫していたのかどうかということである。オリンパスの利益は圧迫されていたし、東芝の利益はそうではない。

それでも何らかのリバウンドはあるだろうし、何より今後の東芝がどうなるのか、興味を惹かれるところである。興味深い進展があれば、また何かを書きたいと思う。