グローバルマクロ投資にうってつけの日

株、債券、金利、通貨、コモディティに関する投資メモ

ポンドの価値は上昇するのではないか?

ポンドの価値は上がるよりないのではないか。

米国以上のインフレ率と米国よりも1%低い金利は、改めて考えると先進国とは思えないほど緩和的だ。米国でさえ十分に緩和的なのに、これがこのまま放置されるのだろうか?

ユーロ圏も利上げを待つ状況になった。ECBが利上げしたらどうなるだろうか。ユーロの価値は上がるだろう。相対的に、ポンドの価値は下がるだろう。したがって、ユーロ圏に隣接する英国の輸入物価は上がるだろう。つまり、英国はユーロ圏からインフレを輸入することになる。

ユーロ圏の次に多い輸入先はどこか?調べると案の定アメリカである。海を挟んだ反対側も、状況は同じだ。利上げ。英国はアメリカからもインフレを輸入しなければならない。

そうすれば、2%の物価上昇率は3%に向かうことになるだろう。

 

どうしてこれが放置されるのか?EU離脱というショックに備えているからだ。でも、EU離脱なんて誰でも知っていることだ。誰でも知った上で、物価は上昇している。

つまり、備えすぎなのだ。BOEは近いうちに利上げしなければならない。

 

ポンドの価値上昇に賭けるとして、反対にどの通貨を売ったら良いだろうか?ある通貨を買うのなら、別の通貨を売らなければならない。パンを買うときには円を売り渡さなければならないのと同じように。

価値の下がりそうな通貨は何か?思いつかない。

少なくとも価値の上がりそうにない通貨は?円である。日銀は日欧にあわせて利上げができそうもないし(そんな根性があるわけがない)、何より身近であるところがよい。

 

ということで、ドル売り円買いを決済して、円を売ってポンドを買う。確信を持てるほど検討していないが、どうなるのか興味がある。いずれにしても、何かを考えて行動するのは良い兆しである。

マクロ分析の道しるべ② 投資の道具としてのGDP

GDPの定義式は、たぶん投資の道具として最も基本的で、優れている。

景気の指標として用いられているGDPは、何かの自然法則にしたがってあらかじめ決定されているものではなく、人が次のように定義したものである。

GDP = (個人の)消費 + (企業の)投資 + (政府の)支出 + (外国人への)純輸出

上記の定義式を語弊を恐れずに言い替えると、個人と企業と政府と外国人の購入額の合計が、つまり経済活動を行う全員の購入額合計がGDPということになる。

さらにいうと、購入した金額は売った金額と等しい。パンを買って100円を支払えば、100円を受け取るパン屋が必ず存在しますよね。だから、購入額(支払額)の合計は、販売額(受取額)の合計でもある。

つまり、GDPは購入額の合計であり、受取額の合計でもある。たくさん購入されるならば景気はよい。だから、GDPは景気の指標である。

重ねてさらに、購入額は生産額とも等しくなる。作った後で売れたものは、上記の個人消費や政府支出や純輸出としてカウントされる。まだ売れていないものは、在庫投資として企業投資にカウントされる。なので、購入額=受取額=生産額という等式が成り立つ(説明としてかなり雑ですけど)。

そういうわけでGDPは生産額と等しく、なので日本語に訳すと国内総生産となる。

生産され、消費された額を受け取ったのは誰か?個人である。でも、ヤマザキがパンを売ったらそれヤマザキが受け取りますよね、ヤマザキは個人じゃなくて企業ですよね、といった疑問が湧くかもしれない。でも、企業は最終的には個人の持ち物であり、企業の受取は個人の所有である。企業の受け取りが配当されれば個人の持ち物となるし、配当するかどうかを決めているのは株主たる個人の集合体である。

 

さて、定義式を少しシンプルにしてもう一度書く。 

GDP = 個人消費 + 企業投資 + 政府支出 + 純輸出

個人消費は、上のヤマザキパンを踏まえると次のように分解できる。

個人消費 = 個人の受取総額であるGDP - 個人が受け取ったけど消費しなかった金額

受け取ったけど消費に回さなかった金額は、むしり取られた税金と貯めたお金に分解できる。なので、個人消費は次のように整理できる。

個人消費 = GDP - 貯蓄 - 税金

税金がでてきたところで、別のコンポーネントである政府支出も分解する。

政府支出 = 税金 + 財政赤字

ついでに純輸出(貿易黒字だと思って下さい)も分解する。

純輸出 = 輸出-輸入

 

分解した個人消費と政府支出と純輸出を定義式に放り込むと、こうなる。

GDP

個人消費 + 企業投資 + 政府支出 + 純輸出

=(GDP - 税金 - 貯蓄)+ 企業投資 +(税金 + 財政赤字)+ (輸出 - 輸入)

 

これで完成である。何を完成させたのか?投資の道具である。

使い方を書くには長く書きすぎたので、つづく。

 

※かなり重要なのに知られていないことだが、SNAにおけるGDPマクロ経済学モデルにおけるGDPは、よく似た別物である。マクロ経済学のテキスト内で(たいてい最初の方に書いてある)、あたかもマクロ経済学モデルに用いるGDPを詳細に解説しているかのようにみえるあれは、SNAにおけるGDPである。そして、そのことを説明してくれる経済学者を見たためしがない。なぜだろう?もっとも、投資の道具としてGDPを用いる場合は、SNAだとかマクロ経済学だとかは気にする必要はないと思う。だいたい合っていればそれでよいので。

マクロ分析の道しるべ① 金利と物価と景気の話

書くことがないので、グローバルマクロ分析やマクロ経済学の初歩について、できるだけ噛み砕いて書いてみたい。自らの理解度を試す意味でも有益なことであるように思う。

 

金利と物価と景気は、基本的に以下のように循環している。

 

景気↓ ▷ 物価↓ ▷ 金利

  △       ▼  

金利↑ ◀ 物価↑ ◁ 景気↑

 

物価が下がれば金利を下げて冷えた経済を助けることができるし、物価が上がれば(≠ 景気が良くなれば、である)金利を上げて、加熱した経済を冷やす必要がでてくる。

では、景気が冷えても物価が上昇を続ける場合、金利を下げることはできないのか?物価と景気のどちらを取るのか?金融政策が理性的に運用されるのであれば、金利が下げられないどころか利上げされる。たとえ景気を絞め殺してでも。

物価が上がってしまったので(≠ 景気が良くなったので)、景気を悪くしないような範囲で慎重に金利を上げて金融を引き締めているのが(◀の前半の過程)アメリカのイエレン議長であり、景気が悪くなったので(≠ 物価が下がったので)金利を下げたが、何も起こらず頭を抱えて夜眠れないのが(▼の過程)日銀総裁である。

金利を下げたのになぜ経済が回復しないのかについて一応は学問上の結論がでている(というよりも金利を下げても景気が回復しないマクロ経済学的理屈が先に生まれて、現実がそれを模倣した)。しかし、その場合にどのようにすれば景気が回復するのかについて結論は出ていない。

 

景気が良くなってモノが売れるから物価が上がる(景気↑→物価↑)という因果関係も、タイムリーで重要な点である。

では、逆をやったらどうなるか?物価を上げたら景気も良くなるのだろうか?

やはり結論は出ていない。人工的に物価を上げたらどうなるのかを試すため、どこかの国で実験が行われた。というか、どこかの国が実験場になった。物価はろくに上がらず、そのパルプンテ的実験はスタートラインにすらたどりつかずに終わった。責任者は頭を抱えて夜眠れなかったに違いない。

 

こうして考えると、つくづく頭を抱えるのが好きな人だな。つづく。

暫定的に、いつか破裂するまでは

為替レートの決定理論は未だ見つかっていないし、恐らく永久に見つからない。

仕方がないので私は、実質金利 = 名目金利 - (期待)インフレ率 が為替レートを決定するのだと便宜的に考えている。1つ目の理由は、そう考えた方が経済全体を整合的に分析し易いからであり、2つ目の理由は、名目金利とインフレ率が為替レートの全てを決定しないにせよ、為替レートに大きな影響を与える要素であることに変わりはないからである。

過去にも触れてきたとおり、ドル円の為替レートはこの数年以上に渡って日米10年金利差と連動してきた。私の考え方に沿うならば、為替レートは名目金利によって間違って決定されてしまい、インフレ率は不当に無視されてきたということである。

過去にはインフレ率も名目金利もまとめて無視された時期もあるから、大切な何かが無視されることは珍しいことではない。貿易摩擦が注目を集めていた時期には、ドル円の為替レートは米国の貿易赤字に連動していた。

 

この時に、為替レートは実質金利によって決定されると考えて投資していたとしたならば、大損を被っていたはずである。金利や物価とは逆の方向に為替レートは継続的かつ大きく動いたからだ。

しかしながら、為替レートは貿易赤字額によって決定されると考え、そのように投資したとしても、やはり最終的には大損を被っていたはずである。為替レートは正しい方向に(少なくとも私にとって正しい方向に)値を修正したからだ。

 

誤れば失い、正しくとも失う。正しく考え、転換点をじっと待ち、捉えて、果敢に決断する必要がある。

転換点はどこにあるのか?皆はいつ正気に戻るのか?マーケットはいつインフレ率に注意を払うのか?

 

転換点は、Fedが利上げを急ぐその理由がインフレ率なのだとマーケットが気がつく瞬間であるはずだ。失業率や雇用統計やGDP成長率や、議長の任期や品のない大統領といった、それほど重要でない要素が注目される限り、それはまだ起こらない。

利上げ回数は確かに重要な事柄かもしれないが、利上げ回数が為替レートを決めているわけではない。どちらかといえば、インフレーションが利上げ回数と為替レートを決めているのだ。

インフレは、まだそれほど注目されていない。そして、名目金利と為替は連動し続け、間違った方向に動き続ける。米国の物価上昇率は、既にリーマン・ショック前の水準にまで至り、さらに上昇しているというのにである。

だから今のところ、インフレーションというマグマはどこか注目されない場所に溜まり続けている。暫定的に、いつか破裂するまでは。

東芝とオリンパスの比較

マーケットについてマクロ的な観点から書くべきことは、まだ見つからない。

 

代わりに東芝について書く。

jp.reuters.com

ニュースを目にした瞬間にチャンスだと感じて調べてみたのだが、東芝オリンパスと同じだと考えて投資をするのは危険である、というのが、調査開始3分で下した私の結論である。

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