グローバルマクロ投資にうってつけの日

株、債券、金利、通貨、コモディティに関する投資メモ

マクロ分析の道しるべ② 投資の道具としてのGDP

GDPの定義式は、たぶん投資の道具として最も基本的で、優れている。

景気の指標として用いられているGDPは、何かの自然法則にしたがってあらかじめ決定されているものではなく、人が次のように定義したものである。

GDP = (個人の)消費 + (企業の)投資 + (政府の)支出 + (外国人への)純輸出

上記の定義式を語弊を恐れずに言い替えると、個人と企業と政府と外国人の購入額の合計が、つまり経済活動を行う全員の購入額合計がGDPということになる。

さらにいうと、購入した金額は売った金額と等しい。パンを買って100円を支払えば、100円を受け取るパン屋が必ず存在しますよね。だから、購入額(支払額)の合計は、販売額(受取額)の合計でもある。

つまり、GDPは購入額の合計であり、受取額の合計でもある。たくさん購入されるならば景気はよい。だから、GDPは景気の指標である。

重ねてさらに、購入額は生産額とも等しくなる。作った後で売れたものは、上記の個人消費や政府支出や純輸出としてカウントされる。まだ売れていないものは、在庫投資として企業投資にカウントされる。なので、購入額=受取額=生産額という等式が成り立つ(説明としてかなり雑ですけど)。

そういうわけでGDPは生産額と等しく、なので日本語に訳すと国内総生産となる。

生産され、消費された額を受け取ったのは誰か?個人である。でも、ヤマザキがパンを売ったらそれヤマザキが受け取りますよね、ヤマザキは個人じゃなくて企業ですよね、といった疑問が湧くかもしれない。でも、企業は最終的には個人の持ち物であり、企業の受取は個人の所有である。企業の受け取りが配当されれば個人の持ち物となるし、配当するかどうかを決めているのは株主たる個人の集合体である。

 

さて、定義式を少しシンプルにしてもう一度書く。 

GDP = 個人消費 + 企業投資 + 政府支出 + 純輸出

個人消費は、上のヤマザキパンを踏まえると次のように分解できる。

個人消費 = 個人の受取総額であるGDP - 個人が受け取ったけど消費しなかった金額

受け取ったけど消費に回さなかった金額は、むしり取られた税金と貯めたお金に分解できる。なので、個人消費は次のように整理できる。

個人消費 = GDP - 貯蓄 - 税金

税金がでてきたところで、別のコンポーネントである政府支出も分解する。

政府支出 = 税金 + 財政赤字

ついでに純輸出(貿易黒字だと思って下さい)も分解する。

純輸出 = 輸出-輸入

 

分解した個人消費と政府支出と純輸出を定義式に放り込むと、こうなる。

GDP

個人消費 + 企業投資 + 政府支出 + 純輸出

=(GDP - 税金 - 貯蓄)+ 企業投資 +(税金 + 財政赤字)+ (輸出 - 輸入)

 

これで完成である。何を完成させたのか?投資の道具である。

使い方を書くには長く書きすぎたので、つづく。

 

※かなり重要なのに知られていないことだが、SNAにおけるGDPマクロ経済学モデルにおけるGDPは、よく似た別物である。マクロ経済学のテキスト内で(たいてい最初の方に書いてある)、あたかもマクロ経済学モデルに用いるGDPを詳細に解説しているかのようにみえるあれは、SNAにおけるGDPである。そして、そのことを説明してくれる経済学者を見たためしがない。なぜだろう?もっとも、投資の道具としてGDPを用いる場合は、SNAだとかマクロ経済学だとかは気にする必要はないと思う。だいたい合っていればそれでよいので。