原油とプラチナと、銀と銅の上昇
ここのところの原油の上昇を不思議に思っていたし、金以外の金属が金よりも上昇していたことも気になっていた。それぞれ少しだけ調べたのでメモしておく。
|原油価格の上昇について
原油について疑問だったのは、生産量は減っていないのに価格が上昇するのはなぜか、ということだった。
まず思いつくのは誰かが需要しているから、というものである。
最近発表されている中国の経済状態がそう悪くないことは知っていたが、なるほど、中国の需要が増えているということであればそれなりに納得できる。
そして供給側も私が思っていたほど悪い状況ではないようだ。
まとめると、供給は増えておらず増産の余地も少ない一方、需要は伸びている、ということになるだろうか。少なくとも、とりあえず空売りしてから考えよう、で済むような状況ではないらしい。
このあたりのことは、2015年の中頃には分かっていたことのようだ。
http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/pdf/msif_142.pdf
そして、現在の原油価格は2015年の中頃と同程度となっている。
この時系列で見た価格関係と、同じく時系列で見た世界経済の減速(特に2回のチャイナショックと米国の減速)とをどう考えるか、整理がつかないところだ。
とにかく、しばらく様子見ということでよい。
|金とプラチナと銀と銅、そして原油の価格推移
次は金属関係について。ここのところ金よりも銀、プラチナ、銅の値上がりが目立っているとは感じていたが、定量的に調べてはいなかった。
まずは金価格の推移についておさらいする。
金は2011年の中頃に最高値1,800ドルを更新して以来、ずっと下落トレンドにあった。私も2011年に買いのポジションを清算して以来、ずっと売買していなかった。
そして2015年末頃に下落トレンドから転換して上昇を始めた。そして私もまた買いのポジションをとっている。
金と他の金属との価格比の推移は以下のようになっている。
(金/プラチナ)
(金/銀)
(金/銅)
(ついでに金/原油)
総じて言えるのは、金属も原油も、この5年間は金以上に下落してきたということだ。そして、金が上昇し始めて数ヶ月すると、金以上に上昇し始めた。上昇のタイミングは2016年2月頃と綺麗に一致している。
|世界経済が回復している可能性
原油が上昇している理由を調べていた時には、OPECに増産の余力がそもそもなく、供給量が頭打ちになっている、という見解が多かったように見受けられた。そしてそれは納得するに十分な理由であるように思えた。
しかし、原油とタイミングを同じくして、金以外の金属の価格も上昇しているとなると話が少々おかしくなる。
原油の供給量と、プラチナ・銀・銅の供給量とが頭打ちになるタイミングがたまたま一致したと考えるよりも、商品の需要全般が伸びている、と考えたほうが自然だからだ。そして、実需が増加した場合に最も価格的な恩恵がないのが金であり、金は他の商品の価格に比して下落することになる。金はその殆どが金融資産として取引されているからだ。
つまり、供給側でなく需要側の要因でコモディティ全般の価格が上昇していると考えたほうが正しいのではないか、ということである。
私は世界経済が回復しているとは思わない。むしろ逆のことを考えている。しかし、価格変動が別のことを告げているのであれば、耳を傾ける必要もある。
今後は世界経済が思ったよりも回復している可能性についても、万が一のシナリオとして注意することにしよう。
簡単に調べただけであったが、収穫は多かった。久しぶりにJOGMECのホームページでも漁ってみようか。これだからグローバルマクロ分析は面白い。